いつか見たあの子。/葉月

あれは、小学校のころの盆の事だった。
僕は、親戚の集まりが苦手だった。自分より遥かに年上のいとこに、じゃれ合いと称して虐められる。
その日もそうだった。嫌になって、お祖母ちゃんの言いつけを破って、近くの海に行った。波打ち際が見渡せる所まで来たとき、浜辺で遊ぶ、彼女に気づいた。
透き通るような白い肌をした彼女に、僕は一瞬で目を奪われた。
それから毎年、砂浜に座って、彼女を眺めていた。そこには、いつも、全く変わらない彼女がいた。僕は、彼女に話し掛ける事ができなかった。だから、今でも名前も知らないでいる。
ある年を境に、彼女は浜辺からいなくなった。飽きたのかな、と思い、お祖母ちゃんちに戻ろうとしたとき、ある男の子がいるのに気づいた。
男の子は、食い入るように、女の子を見ていた。

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