紫釉/どらごん

其れは鬼でもなく、人でもない、半端者であった。

 今は昔、とある流行り病あり。児、これにかかり、肌ただれ指膨らみ異形のものとなり果つる。人、これを鬼と呼び、恐れる。
 時同じくして、中国に住う一族、大和の国へと移り来る。うち一つの家、これを拾えり。この一家、人と違えど美しき肌、岩に似た角を持つ。一家、児を慈しみ、みづから鬼と名乗る。すなわちこれ、大和が鬼の祖となれり。
 児育ちて十七となる。ある日暮、己が命の短きを悟り、急ぎ伴侶を娶る。この妻君鬼にあらずして、児、己を恐らるるを案じ異形を隠す。霧深き湖畔に住処見えず、児かえりかえり見遣りて妻君これに続く。

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